ルクセンブルクはとても不思議な国。
美しい旧市街の建物は、白からベージュといった落ち着いたトーンで統一されており、どこか大人の街の印象を受けます。
ヨーロッパでありがちな、地面のゴミも少なくとてもクリーンです。
中心地から少し歩くと黄色やピンク色の家が少しずつ増え、都会的な雰囲気から少し変わり、可愛らしい雰囲気に。
――さらに先へ進めば、どんな景色が見られるのだろう。
はやる気持ちを抑えながらどんどん歩いていくと、目の前に現れたのは……屈強な面持ちの要塞跡!
さらに奥を見渡せば、小さな山に生い茂る木々。
ルクセンブルクは日本でいう神奈川県ほどの大きさです。
ちいさな国の首都を歩いているだけで、こんなにいろんな景色に出合えるなんて。
洗練された街、キュートな家々、地表を削ぎ落としたような城壁に、深い緑。次々と変わる景色は、絵本の世界を旅しているような気分にさせてくれます。
ページをめくるたびに目まぐるしく景色に、足が疲れるどころか、うきうきとした気持ちが高まるばかり。
そんなルクセンブルク。11月下旬からはクリスマスマーケットが開催され、いっそう街の魅力が高まります。
2022年に、ルクセンブルク中心地で開催されている4か所のクリスマスマーケットに行ってきました。
Contents
ダルム広場(Place d’Armes)
ルクセンブルク到着後、まず向かったのが街の真ん中にあるダルム広場のクリスマスマーケット。
幸運なことに、宿泊したホテルの目の前でした。
周辺の街路樹やカフェもクリスマス仕様に飾られていて、ロマンチックな雰囲気。
ホットワインを片手にゆっくり楽しんでいる人が多かったです。
私のお目当ては「グロンペルキッシェルシャー(Gromperekichelcher)」という、ルクセンブルクの郷土料理。
グロンペルキッシェルシャーはスライスされたじゃがいもと玉ねぎ、小麦粉と卵などをねりあわせ、からりと揚げたもの。ハッシュドポテトに近い味わいです。
なんでも、こちらのお店はクリスマスマーケットの中ではひときわ有名なお店のようで、周辺はたくさんの人で大賑わい。
さっそく購入しようと私も列に並びます。
お店の人に「3個セットだけど大丈夫?」と聞かれ、余裕でしょうと思っていたら……
でかっ
とんかつ3枚分くらいありました……!
おののきながらも、いただきます。
揚げたてはサックサク!
じゃがいもや玉ねぎの自然な甘みと、しっかりきいたコショウが食欲を増進させ、クセになる味わいです。
混ぜ込まれたパセリと思しきものも、ほんのりほろ苦さを醸し出していて、よい!
いけるいける、勢いで食べちゃえば一人で食べ切れるかも。そう思い、ガツガツ食べ進めます。
しかし、2枚目に突入したあたりで迷いが生じ始めました。
――これ、食べきったら夜ごはん食べられへんくならん?
私はキョロキョロとまわりを見渡しはじめました。
食欲旺盛で、異国の国から来た人間の食べ残しも喜んで食べてくれるような人はいないか……?
高校球児的な……(偏見)。
だんだん必死になってきました。
そのときの私の顔はメデューサ化していたようです。
ふだんはやさしいルクセンブルクの人々も、心なしか、このときばかりは私と目を合わせようとしませんでした。
突然、
「エクスキューズミー! それって何ていうメニューなの?」
後方から声をかけられました。
振り返ると、赤いダウンコートにピンクベージュのニット帽を被った、20代と見られる女の子がいました。金髪に青い瞳の美人さん。
(たぶん彼女は、正面から私の表情を見ていなかったので、声をかけることができたのでしょう)
とっさのことで、私は素直にメニュー表にあるグロンペルキッシェルシャーを指差しました。
彼女は「ありがとう」と、立ち去ろうとします。
はっとした私は、
「待って、待って! よかったら、私の買ったものを食べない? 余ってるのだけど」
と提案。コロナ禍の日本ではたぶんNG。もちろん、彼女もちょっとびっくりした顔。
「3つもあって食べきれないの」
とかぶせ気味に話す私に、
「……いくら払えばいい?」と彼女。
「お金はいらない。とにかく食べるのを手伝って!」
はじめは驚いたようすの彼女も、私の必死さに「なんで3つも頼んだの?(笑)」と最後は笑って受け取ってくれました。
3つセットであること、その3つが意外に大きかったことをどう説明しようか悩んでいたところ、突如、手に大きなホットドックを抱えたマダムが登場。
「このお店は3ポーションと決まっているのよ」
聞けば、マダムはルクセンブルクにご在住だそう。
このお店はルクセンブルクの市民にも人気があること。グロンペルキッシェルシャーは家庭でもつくられているけれど、ポテトを千切りにしたり、油で揚げたりするのが手間だからお店で買う人も多いことなどを教えてくれました。
声をかけてくれら女の子はスペインから来たそう。
これからルクセンブルク、ベルギーを一人でまわるのだとか。
それぞれが、どうして一人でクリスマスマーケットを訪れているのか事情はわからないけれど、グロンペルキッシェルシャーをきっかけにひとときの交流が生まれました。
ホテルが目の前だったので、ダルム広場のクリスマスマーケットには何度も訪れました。
夜にはホットワインもゲット。
ルクセンブルクでは、赤ワインを使ったホットワインはもちろん、アルザス地方やルクセンブルク特有の白ワインを使ったホットワインも楽しむことができます。
憲法広場(Constitution Square)
ライトアップがきれいなのは、憲法広場のマーケット。
平日でも、夜はたくさんの人で賑わっていました。
街を歩いていると、ふっと姿をあらわします。
魔法の遊園地みたい。
観覧車などのアトラクションも豊富です。
子どもたちも楽しそうでした。
街中でこんなアトラクションを楽しめるなんて、すごいですよね。
絶えずマライア・キャリーなどのクリスマスソングがBGMで流れているので、大人ぼっち旅の私もしっかりテンションが上がりました。
クリスマスピラミッドもカラフル!
食べ物はもちろん、雑貨やお土産になりそうなお菓子を売っているところなど、いろんなお店がありました。
ツリーは2種類も!
パリ広場(Place de Paris)
乙女ごころをくすぐるのが、パリ広場のクリスマスマーケット。
木目調の屋台にサンタさんやトナカイがあしらわれ、統一感のあるデザインがとってもキュートです。
道路を挟んだ先にもマーケットがあり、こちらには巨大な空中ブランコが。
かおりにつられて、ハンバーガーをゲットしました。
マックの2倍くらいの大きさがありました……!
ガツンと入った巨大パティは、オーダー後に金属ボウルに入れて蒸し蒸してくれるので、ふっくらジューシー。
あめ色に炒められた玉ねぎもたっぷりサンドされているので、落とさないように食べるのが大変でした。
こちらの食べ物って、日本よりお値段はするのだけど、具材の量がケチケチしていなからいいですよね。
キネックズイス公園(Parc Kinnekswiss)
通常、ルクセンブルク中心地のクリスマスマーケットは先述のダルム広場、憲法広場、パリ広場とギョーム2世広場にて開催されているもよう。
ですが、私が訪れたときは広場が工事中のためか、ギョーム2世広場のクリスマスマーケットはキネックズイス公園内で開催されていました。
公園内には木々が生い茂り、森の中でマーケットを楽しむことができます。
中心地からは少し離れていて、かつ私が訪れたのは平日であるのにもかかわらず、このマーケットがいちばん賑わっていました。
お客さんはほとんど大人でした。
ほかと比べて特別規模が大きいわけではないのですが、雰囲気がいいからかな?
このあと、ベルギーとオランダのクリスマスマーケットも回りました。
どのマーケットもとても素敵だったのですが、個性もさまざまなマーケットが同じ都市内に4つもあるルクセンブルクはすごいと思いました。
しかも、ルクセンブルクはトラムやバスなど、公共の交通機関が無料!
1日で4つのマーケットをぐるりと回ることもできちゃいます。
街並みも本当にきれいなので、今度は花が咲く季節に訪れたいな。