大学4年生の卒業旅行に、私はフランスを選びました。

思えば当時、私は崖っぷちにいました。
就職氷河期真っ只中で、旅行を予約した時点(たしか1月くらい?)では就職先が見つかっていませんでした。
それでも「卒業前にヨーロッパに行ってみたい」と、意を決してパックツアーに申し込んだのを覚えています。
これが人生初ヨーロッパでした。

当時の憧れていた国はフランス&イタリア。日程や空き状況の兼ね合いから、フランスをチョイス

憧れの国、フランスへ


就職氷河期と言えど、周りの大半の友人は就職先をとっくに決めていました。
その上、数少ない友人はすでに卒業旅行を済ませており、金銭面的&時間的にも私のフランス旅行へ付き合ってくれる人は誰一人としておらず……。
当時まだ大学1年生であった、妹を誘いフランスへと飛び立ちました。
(ちなみに妹はこの旅行がきっかけで、フランスLOVE人間になりました。)

おそらくフランスへ行ったことがある方はよくご存知だと思いますが、特に初ヨーロッパがフランスだと、結構カルチャーショックを受けますよね。笑
(地面にとんでもなくゴミが落ちていたり、お釣りの勘定が適当であったり。私が一番ショックだったのは、見た目は絶対”肉系”のサンドイッチなのに、かぶりついたら具が全部茄子だけだった時です。しかも、当時茄子がキライでした。今は好きですが)

雪が降ると地面のゴミが隠れて綺麗だった(笑)何年も前のことなので、今は変わっているのかもしれません。

そのような初フランスでしたが、パックツアーでしたのでアテンダントさんがいますし、特に大きなハプニングはなく旅行を楽しんでいました。

そして旅行最終日。
最終日のみ終日フリータイムだったので、妹と私は華やぐパリの街へ繰り出しました。

地下鉄の乗り方には相当苦労しました。
ですが、現地の方(関西人の彼女がいるらしい)に助けられたりしながら、なんとか地下鉄にも乗ることができ、パリのいろんな場所を散策しました。

そして地下鉄にも慣れてきたころ、事件は起きました。

当時フランスでは無銭乗車が一部で横行しており、駅構内で切符の抜き打ちテストがあったんですね。

それで、なんと、


妹が引っかかりました。



もちろん、無銭乗車はしていません。
でも、買ったはずの切符が無くなっていたんですね。
(単純にどこかへ落としたんだと思います)

日本では「すみません、落としました」と事情を話せば済むかと思います。
ですがそれで済まないのがガイコクです。
しかもめちゃめちゃ怖いんです、

テメ、なんで切符持っとらんねん。ツラ貸せや。



くらいの勢いで圧をかけて来るわけです。


「え、これ警察に連行されるやつ?え、このあと、ルーブル美術館行けなくなる?え、ひょっとしてこのまま日本に帰れなくなる?え……大使館電話せなあかんやつ?」
と、頭の中をいろんな考えがぐるぐる周り、ちょっとしたパニック状態でした。


でもでも、私たち見るからに観光客ですし、「罰金」(当時でたしか7000円ほど)で済むことになりました。
(よくあることなのか、英語など様々な国の言葉で書かれた紙を提示されました。日本語はありませんでしたが。)


ところが


その紙を見てなぜか私は突然冷静?になり、

「なんで?切符落としただけやん?」



と、急に抗議し始めました。笑


いや、今でしたら絶対、すんなり諦めますよ?
むしろ異国の地で警察に連行されない方が良いに決まっていますし。


ですが当時、良いも悪いも日本しか知らない私は

切符買いました改札付近の駅員さんに聞いてください私たち日本人ですよ?無銭乗車するはずないじゃないほら証拠にこれまでの使った切符こんなに持ってるだいたい事情も聞かずにいきなりドヤしてくるのってどう考えてもおかしいでしょ



(今思えばかなり恥ずかしい)


と、英語が通じない抜き打ち検査員さんにひたすら訴え続けました。






諦めて、当時の私……


始めは圧が尋常でなかった検査員さんも、食い下がらないアジア人にさすがに困ったようで、ちょっと英語が話せるような別の検査員さんを呼びました。
その英語が話せる検査員さんが、


「君の友人(妹)は、罰金を払った(←私が抵抗している間に払っていた)。話はこれでおしまい。なのにどうして君が泣く必要があるんだい?(←私はなぜか号泣していた)」

のようなことを話していたのを覚えています。


ですが当時、
・悪いことをしていないのに、罰金(しかもまぁまぁ高い)を支払わされた
・まるで犯罪者に対峙するレベルの圧力をかけられた
・そもそも絶対話が通じていない。通じたらわかってくれるはず(という思い込み)

で、鼻水だらだらで大号泣していました。

そして私が抗議している間に、別のおじいちゃんも検査に引っかかり、あっさり罰金を払っていました。笑

その後ももんちゃくしましたが、往生際の悪い私も「タイム イズ プライスレス」(旅行時は時に)と、さすがに諦めてその場を立ち去り、電車に乗り込みました。
ですが、電車に乗った後も”無実の罪”を着せられたようで(実際は切符を紛失しているので、どう考えてもこちらが悪い)、ずっと泣きながら鼻を垂らしていました。

たくさんある思い出の中で、もっとも印象に残っている出来事が……


ところが、
しばらくすると、私は驚きで顔を上げました。



3名ほどの演奏家の方が突然、私をなぐさめるように曲を奏で始めたのです @地下鉄の中


たしか、ヴァイオリンやトランペットだったかと思います。
隣の車両でした。


その演奏家たちは紛れもなく、こちらに向かって



「ルパン三世」



のテーマソングを演奏しているのです。


周りの乗客の中には手拍子をしている人もいました。



私は恥ずかしさと驚きで、涙はもちろん鼻水もピタッと止まりました。


そして間もなく私たちが降りる予定の駅に着き、電車を後にしました。
ですが、走り去る電車の中でもその演奏は続いていました。

当時、お礼を言えなかったのが本当に申し訳ない……。


あとあと妹に話を聞くと、演奏家の方々と妹の間で「泣いているの?」→「うん」といったジャスチャーでのやり取りがあったようです。

驚きは続きます。

妹が財布の中にどっさりと小銭を抱えていたのですが、なんとそれは、フランスの人々からの”カンパ”だったというのです。

どうやら私が駅で、検査員さんと泣きながらやりとりしているのを見て、同情した(呆れた?)道ゆく複数の方々が、小銭を次から次へと置いていってくれたとか……。

改めてお恥ずかしい。
ですが、フランスのみなさま、当時はありがとうございました……!




改めて。みなさんは「フランス」と聞くと何を思い浮かべますか?
私はこの経験から、涙と鼻水のしょっぱさを思い出すようになりました(トラウマ?)。

あと茄子サンドイッチですね。笑

当時、学生の貧乏旅行の中での罰金7000円はショックでしたが、「演奏」や、さまざな思いやりに対する謝礼だと考えれば、むしろ安いくらい。今となっては良い思い出です。

フランス旅行以降もいろんな国へ行きました。
パッケージツアーでなく、個人で飛行機や宿を予約するようになると活動の幅もぐんと広がりました。
(過去に一度、ホテルの予約がとれておらず、焦ったこともありました。)


そしてどこの国へ行っても驚くのが、現地の人とコミュニケーションする中で「せっかく来てくれたのだから、自分の国を目一杯楽しんでいってほしい」というホスピタリティを、必ず一度は感じることです。

これらの経験を経てからは、日本に来てくれた海外旅行客の方がいたら、私もその”恩返し”をするように心がけています。

最近はずっとコロナの影響で海外へ行くこともできず、海外の人々を迎えることもできず寂しいですね。
少しでも早く、平和な日々が戻って来ますように。

今日はフランスでの思い出話でした。


ラデュレのカフェにて。写真のフレンチトーストも美味しかったのですが、隣の席に座ったおじいさんたちが気さくに話しかけてくれたのが印象的でした

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